📋 目次
📖 この記事でわかること
- ✅ 冒険家ローマン・ダイアルの壮絶な人生と家族の物語がわかる
- ✅ コスタリカのジャングルで息子に何が起きたのかがわかる
- ✅ 親として子供の挑戦にどう向き合うべきか考えるヒントが得られる
お子さんと一緒に冒険したことはありますか?
公園での探検、キャンプでの火起こし、あるいは動物園でたぬきに指を噛まれる…。
今回紹介するのは、そんな「親子の冒険」が最も美しく、そして最も残酷な形で描かれた一冊。
ローマン・ダイアル著『消えた冒険家』です。
著者ローマン・ダイアルは「生きる神話」と呼ばれた冒険家
まず、この本の著者がただ者ではありません。
ローマン・ダイアルさんは、大学教授(生物学)でありながらゴリゴリの冒険家。登山、アイスクライミング、ラフティングの技術を持ち、ジャングルの樹冠に網をかけて動物を調査するような研究生活を送っています。
元ナショナルジオグラフィック専属探検家。同誌では「生きる神話」とまで称された人物です。
- 大学教授(生物学)+冒険家という異色の肩書き
- 元ナショナルジオグラフィック専属探検家
- 木に登って樹冠の動物を調査する体力派の研究者
- 「生きる神話」と呼ばれるほどの実績
前半は心温まる親子の冒険記──6歳の息子と100km踏破
全500ページの本書。前半はローマンさんの半生と家族のエピソードが綴られます。
海外ノンフィクションにありがちな「親の馴れ初めから始まる」パートこそ軽く流されますが、奥さんのペギーさんとの出会いあたりから筆が乗り始め、特に息子コーディ君との冒険は胸が温かくなる名場面の連続です。
中でも印象的なのが、アリューシャン列島のウムナック島を6歳の息子と歩いた旅。
橋から橋まで約100km。6日間かけて歩く。食料の補給ポイントはなし。ゴールまで一切の補給なし。
「6歳にそこまでさせる?」と思いますよね。でも、コーディ君は楽しそうなのです。
夜になれば読み聞かせをしてあげる。異世界のような風景の中で、コーディ君は「スペースキャプテンだ、ついてこい!」とお父さんを引っ張る。
そしてこの旅で、コーディ君は初めて見知らぬ他人に向かってこう名乗ります。
「僕はローマン2世だ」と。
- 欧米にはジュニア・シニアの文化がある(父の名を引き継ぐ慣例)
- 息子が自ら「ローマン2世」と名乗る=父の名に誇りを持った瞬間
- 冒険家の父にとって、これ以上ない喜びだった
未知への恐怖心がない。それはお父さんがお父さんだから。
冒険を通じて育まれた親子の絆。学者ならではの繊細で美しい自然描写。前半だけで十分に読み応えのある作品です。
──しかし、この温かさが後半への壮大な「前振り」だと知ったとき、読者は凍りつきます。
2014年7月──コーディ君がコスタリカのジャングルで消えた
2014年7月。成長したコーディは、自立した冒険家として南米を渡り歩いていました。
挑戦の舞台は、コスタリカのコルコバド国立公園。観光用のトレイルから外れた「オフトレール区間」。
ただ自然が厳しいだけではありません。
そのエリアは薬物の売買、違法採掘、強盗、殺人の温床としても知られる場所でした。警察の目が届かない密林の奥地だからこそ、犯罪者たちが拠点にしていたのです。
コーディは森に入る前、父にメールを送っていました。
次の目的地には1週間後に到着する予定──。
冒険家の間には「アウトデート」という概念があります。決められた日数を過ぎても連絡がない場合、イレギュラーが発生したと判断し、捜索依頼を出すサインになるというもの。
コーディはアウトデートしました。そして、二度と姿を現しませんでした。
ノンフィクションなのにスペクタクル──3年間の壮絶な捜索
後半は、ローマンさんと家族、そして協力者たちによる約3年間の必死の捜索が描かれます。
ノンフィクションなのに、まるでフィクションのような展開の連続です。
- 足を引っ張るライバル的存在の登場
- コスタリカの危険地帯での捜索活動
- 現地の犯罪組織との緊張関係
- 手がかりが見つかっては消える繰り返し
- 父親としての後悔と使命感のせめぎ合い
メールをちゃんと読んでいれば。もっと早く気づいていれば。
そもそも、冒険の楽しさを教えたのは自分ではないか──。
その自責の念がページの端々からにじみ出てきます。
この本が本当に問いかけていること
「消えた冒険家の捜索」はあくまで物語の手段にすぎません。
この本が本当に語りたいのは、こういうことです。
親は、子供の人生に対してどこまで責任を持つべきなのか?
冒険の楽しさを教え、未知への恐怖を取り除き、自立した冒険家に育てた。それは素晴らしい教育だったのか、それとも危険な道へ送り出してしまったのか。答えは出ません。でも、考えずにはいられません。
6歳でアリューシャン列島を100km歩いた少年。「僕はローマン2世だ」と誇らしげに名乗った少年。
その少年が大人になり、父と同じ冒険の道を選び、そしてジャングルに消えた。
前半の温かいエピソードが、後半では全て「前振り」として重くのしかかってきます。だからこそ、この本は500ページの長さが必要だったのです。
「後半の捜索パートだけ読めばいい」と前半を飛ばす。前半の親子エピソードがあるからこそ、後半の重みが何倍にもなります。
前半を「微笑ましい親子の冒険記」として味わい尽くす。そうすると後半で、同じエピソードが全く違う意味を持って迫ってきます。
冒険好き・子育て中の方に特におすすめの一冊
冒険ノンフィクションとして読んでも一級品。親子の物語として読んでも一級品。
そして「子供に何を教え、何を経験させ、どこで手を離すか」という普遍的な問いが、500ページを通じてじわじわと心に染みてくる作品です。
お子さんと趣味を共有している方、子供の挑戦をどこまで応援すべきか迷ったことのある方にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
お子さん(またはパートナー)に「最近一緒にやって楽しかったこと」を聞いてみてください。その答えが、あなたが相手の人生に与えている影響のヒントになるかもしれません。
「知ってる?ナショナルジオグラフィックに”生きる神話”って呼ばれた冒険家がいてさ。大学教授でもあるんだけど、6歳の息子をアリューシャン列島に連れてって100km歩かせたんだって。で、その息子が大きくなって自分も冒険家になるんだけど、コスタリカのジャングルで消えちゃうの。お父さんが3年かけて探すんだけど、本が問いかけてるのは”親は子供の人生にどこまで責任を持つべきか”っていう話なんだよね。冒険の楽しさを教えたのは自分なのに、って。……子育てしてる人にはめちゃくちゃ刺さる本だよ。」


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