📋 目次
📖 この記事でわかること
- ✅ 社内政治が会社に必ず存在する5つの理由がわかる
- ✅ 社内政治を排除した会社がどう崩壊したかがわかる
- ✅ 政治力の5つのパワーと影響力の違いがわかる
「うちの会社に社内政治なんてないよ」——そう思っていませんか?
実はそれ、大きな勘違いかもしれません。経営学の世界では「社内政治と経営は切り離せない」というのはもはや常識。何十年も論文が出続けているメジャーな研究テーマなんです。
今回は書籍『社内政治の科学』をもとに、社内政治の正体と正しい向き合い方を解説します。
社内政治は「血管」ではなく「骨格」——会社の構造そのもの
本書にはこんな衝撃的な一節があります。
「社内政治は会社というシステムの血管ではなく、その構造に本質的に組み込まれている現象なのです。」
つまり社内政治は「良い・悪い」の問題ではなく、「起きるもの」なのです。もっと言えば、会社経営とは社内政治そのものだということ。
社内政治が生まれる最大の理由——「部署が違えばゴールが違う」
本書では社内政治が生まれる5つの理由が紹介されていますが、その筆頭が「目標や信念の相違」です。
部署が分かれると、みんなの目標はバラバラになります。これは避けようがありません。
- 営業部:顧客にいい顔をしたいので納期を短縮したがる
- 生産部:品質を維持したいので納期を伸ばしたがる
- 財務部:それを見て「コストを削減しろ」と言う
これは地獄のような状態に見えますが、実はどの会社でも日常的に起きていること。
本書はこう定義しています——利害が衝突する集団が落としどころを探る営みを、我々は「政治」と呼んでいると。
つまり社内政治とは「全部」です。会社経営の毎日です。
社内政治の定義は意外と広い——根回しも飯奢りも全部政治
本書における社内政治の定義は、「目標達成のために社内での公式じゃない手段を使うこと」です。
- 会議の前にキーパーソンに「こういう方向で進めたい」と事前に声をかけておく
- 納期が厳しいスタッフに「今度飯奢るからお願い!」と頼む
- 何の用事もないけど「ご挨拶だけでも」と顔を出しておく
こういうの、全部社内政治です。
「派閥が足を引っ張り合うドロドロ」だけが社内政治ではありません。利害が対立する人たちが調整するという行為そのものが社内政治。そう考えると、これはごく健全なものだとわかります。
社内政治をなくそうとした会社の末路——全員イエスマン化
「社内政治なんてなくせばいいじゃないか」——そう思った会社の事例が本書に登場します。
ある会社が「組織風土改革」と銘打って、上司・部下という関係をやめ、みんなが自由に意見を言って決める体制に変えました。裏でこっそり交渉したり、決裁権者を動かすような行為も禁止。
最初は活発に多様なアイデアが出るようになり、成功したかに見えました。
しかし、その後に起きたのは「世間の価値観に従うだけの意思決定」でした。
「ダイバーシティをどう進めるか」という議論で、肯定的な発言だけが「時代に合っている」と褒められ、社内の実態に合わせた慎重論を唱えた人は「時代遅れ」とレッテルを貼られた。
例えば「女性役員の登用を増やそう」に対して「でも今、適任の人いなくない?」と言うだけで「あいつは分かってない」とされてしまう状態に。
さらに別の会社では、給料を自分で決めていいという制度を導入。するとどうなったか。
爆発的に高くした人はいないのですが、少しずつ上げたいという希望に対して「それは高すぎる」と言えるプレッシャーが消えてしまい、売上は伸びていないのに人件費だけがどんどん上がっていったのです。
ネガティブなフィードバックって、誰もやりたくないんですよね。「ダメ」と言う役割の人が必要。それにはお金をもらわないとやってられない——つまりマネジメントという仕事そのものです。
マネージャーの仕事は「社内政治の駆逐」ではなく「健全な活用」
これらの事例を踏まえ、本書はこう結論づけています。
「マネージャーに求められるのは社内政治を駆逐することではなく、社内政治は常に存在するという前提で、それを健全な調整機能として活用していく姿勢です。社内政治は悪ではありません。それは人が集まって働く組織において避けることのできない現象です。」
社内政治を「面倒くさいからなくしたい」と思うのは、正常なマネジメントから逃げているだけ。向き合って、地道に調整していくしかないのです。
社内政治は日本だけじゃない——アメリカの方がむしろ激しい
「社内政治=日本の企業文化」というイメージがありますが、実は社内政治の研究が始まったのはアメリカ。研究が最も盛んなのもアメリカです。
なぜか?アメリカは簡単に解雇できるから。上司が強大な「強制パワー」を持っているため、部下は上司の機嫌を取らざるを得ない。明日上司の家でバーベキューがあると言われたら、行くしかない。首になるのが嫌だから。
社内政治における「5つのパワー」——最も影響力があるのは?
本書では社内政治における政治力を「5つのパワー」に分類しています。
- 強制パワー:相手に罰を与えることができる力(解雇・降格など)
- 報酬パワー:相手の報酬を決定できる力(昇給・ボーナスなど)
- 正当パワー:役職や地位から生まれる権限
- 専門パワー:高度な知識や技術があると認識されることで生まれる力
- 準拠パワー:尊敬や憧れの存在だと感じられることで生まれる力
直感に反する結果ですが、データで実証されたところによると強制パワーは影響力が弱い。
最も影響力が大きかったのは「専門パワー」と「準拠パワー」でした。
強制パワー(罰で従わせる)
→ 恐怖による従属は表面的で長続きしない
専門パワー(この人は詳しい)
準拠パワー(この人を尊敬している)
→ 自発的に「この人の言うことに従おう」となる
「この人は専門家だ」と思われると自動的に権威が生まれ、その人の言うことに従おうという空気ができる。また、人間的に尊敬されている人には、周囲が自然と情報を集めに来る。
怖いのは、自分が変わっていなくてもYouTubeなどのメディア露出によって後天的に準拠パワーが生まれるケース。以前は普通に話していた同僚から「あ、本物だ!」と言われるようになったりする——そんなエピソードも紹介されていました。
「根回し」は世界共通?——バックステージネゴシエーションとの違い
「根回し(Nemawashi)」は世界共通語になっていますが、実はアメリカにも似た概念があります。それが「バックステージネゴシエーション(裏舞台での交渉)」です。
「今度の会議の落としどころ、ここで行きたいんですがどう思いますか?」
→ より利害調整・交渉寄り
「今後お世話になるかと思いますので、今日はご挨拶だけでも」
→ 特に何かを言うわけではない事前挨拶も含む、より広い概念
地域の顔役に「ご挨拶だけでも」と伺うのは納得できるのに、会社だと「アホ草」と感じてしまう——その感覚のズレこそが、社内政治に対する偏見かもしれません。
会社も地域社会と同じ。人が集まる場所では、こうした調整は本質的に大切なものなのです。
社内政治から逃げるな——見たくないものを見るのがマネージャーの仕事
動画内では、実際に「社内政治なんて要らない、みんないい感じで動けばいい」と思っていたマネージャーが、本書を読んで「それは正常なマネジメントから逃げていただけだ」と気づくシーンがありました。
社内政治が面倒くさいから「そんなものは要らない」と価値判断を一方的にしてしまう。でもそれは問題の先送りにすぎません。
・利害対立が放置され、チーム間の不満が蓄積する
・ネガティブフィードバックが誰もできなくなる
・「世間的に正しそうなこと」だけが通る機能不全に陥る
・結果として全体最適からほど遠い意思決定が繰り返される
「社内政治なんてクソだ」と目を背ける
「うちには社内政治はない」と信じ込む
面倒な調整を全て「いい感じに」で済ませる
「社内政治は必ず存在する」と認める
健全な調整機能として活用する
事前の根回しや利害調整を丁寧に行う
次の会議の前に、キーパーソン1人に「こういう方向で進めたいんですが」と事前に声をかけてみましょう。それが健全な社内政治の第一歩です。
「社内政治ってさ、ドロドロの派閥争いってイメージあるじゃん?でも実は経営学では『社内政治=会社経営そのもの』ってのが常識らしいよ。部署が違えばゴールが違う。その利害を調整するのが政治。で、社内政治をなくそうとした会社があったんだけど、全員イエスマンになって機能不全に陥ったんだって。怖くない?つまり社内政治って悪じゃなくて、むしろ健全に機能してる証拠なんだよ。」


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